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名古屋高等裁判所金沢支部 昭和43年(ウ)81号 決定

申立人 福野町広塚農業協同組合

訴訟代理人 宮林彦九郎

被申立人 平本こと孫貴運

主文

本件申立を棄却する。

申立費用は申立人の負担とする。

理由

第一、申立の趣旨及び理由

別紙記載のとおりである。

第二、当裁判所の判断

申立人主張の要旨は、当庁昭和四三年(ウ)第七九号強制執行停止決定申立事件について、当裁判所が民事訴訟法第五一二条に基きなした、富山地方裁判所礪波支部昭和四二年(ワ)第一九号事件の仮執行宣言付判決に基く強制執行を停止する旨の決定について、同決定を取消した上、右仮執行宣言の担保を増額の上、右判決に基く執行を為すべきことを命ぜられたい、というものであり、所論の如く、控訴裁判所が同法第五一二条に基き、控訴人の申立に従つて強制執行停止決定を発した後に於ても、控訴審における本案審理の状況に照し、同強制執行の停止を解きその継続を図るのが相当であると判断するに至つたときは、同裁判所は、被控訴人の申立に基き、同法第五一二条の強制執行続行決定をなし得るものと解されるが、しかしながら本件に於ては、前記強制執行停止決定後本件決定日までの間一カ月余を経過するに過ぎず、いまだ控訴審における第一回口頭弁論期日も開かれていない状況にあり、その他申立にかかる諸般の事情を総合しても前記執行停止決定を取消し、その続行を命ずるのが相当であると判断する程度にまで到達していないので本件申立は結局認容することはできない。

よつて、本件申立費用の負担につき民事訴訟法第八九条、第九五条を適用して主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 小山市次 裁判官 島崎三郎 裁判官 井上孝一)

別紙

申立の趣旨

一、当庁が昭和四三年一一月八日なした当庁昭和四三年(ウ)第七九号強制執行停止決定を取消す。

二、申立人に対し富山地方裁判所礪波支部が昭和四三年一〇月二四日言渡した同庁昭和四二年(ワ)第一九号土地明渡、妨害予防請求事件についての判決の仮執行宣言に基く強制執行の開始を命ずる。

との裁判並に仮執行の宣言を求める。

申立の理由

一、右当事者間の富山地方裁判所礪波支部昭和四二年(ワ)第一九号土地明渡、妨害予防請求事件について、同庁は昭和四三年一〇月二四日次のとおりの判決を言渡した。

判決(主文)

被告は、原告に対し、別紙物件目録(一)記載の各土地上にある空缶、金属屑類を収去して、右土地を明渡せ。

被告は右土地に立入つてはならない。

被告は、原告に対し、別紙物件目録(二)記載の土地に立入り、空缶、金属屑類を蔵置してはならない。

訴訟費用は被告の負担とする。

この判決の第(一)および第(四)各項は金一〇万円の担保を供することを条件に仮に執行することができる。

二、被申立人は、右判決について、名古屋高等裁判所金沢支部に対し、控訴を提起し、且つ右判決に基く強制執行の停止を申立て、同裁判所は、被申立人に対し、金七万円の保証を立てさせ、昭和四三年一一月八日次のとおり決定した。

主文

前記債務名義に基く強制執行は当庁昭和四三年(ネ)第一七三号控訴事件の本案判決があるまで停止する。

三、前記富山地方裁判所礪波支部昭和四二年(ワ)第一九号土地明渡、妨害予防請求事件の訴訟物の価額は、福野町長発給の固定資産評価証明書によれば金一〇万円を超えないものであり、本来ならば、礪波簡易裁判所に係属すべきものである処、申立人から同支部に対し提出した「自ら裁判をなすべきことの申立」書に記載したとおりの理由もあつて、特に同裁判所に於て審理、判決されたものである。

即ち申立人の事務所、売店および倉庫は、国鉄福野駅前にある処、近く都市計画に基く駅前広場整備工事が行われるため、現在敷地では手狭となるので、近くに別の土地を求めて倉庫をそちらに移すこととし、監督官庁である富山県知事の許可を得て、昭和四一年合計二、一〇〇余平方米の土地を買受けた。前記第一審判決の別紙物件目録(一)、(二)の土地はいずれもこの二、一〇〇余平方米の土地の一部である。

従つて、右(一)、(二)記載の土地に関する争訟は、単に右(一)、(二)記載の土地だけに関する争訟に止まらず、前記合計二、一〇〇平方米の土地全部に関する争訟であり、しかも申立人が農業協同組合であるから、その社会的影響が大きいので、申立人から申立てて特に地方裁判所に係属することになつたものである。

四、従つて、右第一審判決の仮執行宣言に基く強制執行を停止することは、前記二、一〇〇余平方米の利用に係るものであり、これによつて受ける申立人の不利益は、被申立人の得る利益に比し、全く比ぶべくもない甚大なものであり、到底七万円の担保で保証されるものではない。

しかも、福野町には現在申立人をも含めて四つの農業協同組合があるが、国の指導方針に従い、近く合併して一町一組合とすることになつており、先に述べた二、一〇〇余平方米の土地に新設することを計画している倉庫は、合併後は福野町全農民の倉庫としての使命を負うものであり、合併を目前に控え、右強制執行停止決定に因り、右の利用計画に影響を来すこととなり、結果は甚だ重大とせねばならない。

五、仍つて、一〇万円の保証を増額して、右強制執行を命ずる旨の裁判を求めるため、民事訴訟法第五百十二条第一項中段の規定に則り本申立に及ぶ。

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